つながる通信 01

市民風車は、多くの皆さんに支えられて回り始めます。
クリーンな電気は、人、街、モノ、コトをつなぐエネルギーも届けます。
ここでは、市民風車を介してつながったさまざまな皆さんをピックアップ。
一人ひとりの想いを紹介していきます。

連載 01

地域に貢献してこそ市民風車

奥田 耕三

事業開発

風力発電所は巨大な建造物であり、事業期間は多くが20年に及ぶ。その間、地域に受け入れてもらうためには、風力発電と地域貢献がセットになった仕組みが必要ではないか。青森県鰺ヶ沢町の計画で事業開発担当の試みが始まった。

奥田 耕三Kozo Okuda

大阪府出身。前身の(株)北海道市民風力発電に第1号社員として入社。2012年8月に一旦退職して高校教師になったが、2016年4月に復職。現在、青森県鰺ヶ沢町で計画が進められている「(仮)七里長浜風力発電所」の開発業務に汗を流している。2女の父。

津軽弁に苦労して開発した鰺ヶ沢1号機

津軽弁に苦労して開発した鰺ヶ沢1号機

青森の日本海に面した鰺ヶ沢町は、古くから良港で知られた地。
南には県の最高峰である岩木山がそびえている。
その美しい山容を仰ぐ麓の畑では
陽春の下で菜の花が咲き、あたかも黄一色の絨毯となる。
2018年5月、長い歴史と豊かな自然を誇るこの町で、
当社にとっては16年ぶりとなる風力発電所の基礎工事が始まる。
地権者との用地交渉や説明会、町への許認可申請などの
事業開発は、札幌本社の奥田耕三が担当している。

高校時代から南米の森林伐採や水質汚染などに関心があった。
環境系の知識を学ぶため北海道の大学、大学院へと進み、
その指導教官に紹介されたのが、日本初の市民風車「はまかぜ」ちゃんの
建設にまさに奔走していた当社代表の鈴木亨だった。
地球温暖化の現象解明を目指す研究ではなく、
風力発電という具体的手段による問題解決指向型の取り組みに感銘した。
そして、自分の進むべき道を見つけた。

入社して2年目、実質的に初めて取り組んだ開発案件が、
現在同町で運転中の市民風車「わんず」だった。
津軽弁が分からず苦労したが、当時の町長がゴーサインを出してくれ、
役場の対応も協力的だったおかげで、大きなトラブルなく進捗。
また、建設費の半分近くをNEDO*の補助金でまかなえたことから、
開発着手から約2年で運転を開始することができた。
それからいくつかの発電所建設や保守管理に携わったが、
鰺ヶ沢はことのほか思い出が深い。

 *国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
*国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

ハンコを捺してもらう難しさと格闘

事業開発の業務は多岐にわたるが、
一番の仕事は何といっても地権者から同意をもらうこと、
そして、住民の皆さんの合意を形成することだ。
再生可能エネルギーは相対的にリスクが少ないが、問題点が皆無ではない。
ときに厳しい言葉を浴びせられることもあり、
ハンコを捺してもらうことの日々難しさを噛みしめている。

大切にしているのは、相手の立場を考えて対応すること。
肝心なことで嘘をつかず、ごまかさないこと。
これまで関わってきたすべてのプロジェクトでは、
真正直に向き合うことで地権者、住民の信用を得てきた。
風力発電がやっていることが環境を守ることにつながり、
長期的には地域に利益をもたらすと信じている。

農家さんが左手に持つのは希少な白いメロン。
農家さんが左手に持つのは希少な白いメロン。

開発業務と並行して地域活性化に挑戦

2度目となる鰺ヶ沢での事業開発を始めるにあたって、
奥田は通常の業務のほかに、地元の特産品を作って
地元にお金が落ちる仕組みづくりに挑戦したい旨を鈴木に伝え、
自分のできる範囲でやることを認めてもらった。

たとえば、糖度17度を超える鰺ヶ沢メロンの販路づくりや、
売電収入の一部からアルバイト代を捻出して
若者に高齢者宅などの除雪や手伝いをしてもらうアイデアはどうか。
さっそく地元の鰺ヶ沢高校を訪ね、
校長先生や教頭先生、地域活性化活動に取り組みを始めたばかりの
SBP(ソーシャル・ビジネス・プロジェクト)研究会に所属する
生徒さんに提案すると、顧問の先生も含めて協力を快諾。
以後、共同で商品開発するなどの良好な関係を築いてきている。

海と山に囲まれた鰺ヶ沢の畑は土のミネラル分が豊富な砂地で
昼夜の温度差が大きいことから、驚くほど甘いメロンができる。
開発2年目の夏は地権者でもある農家さんの畑に通い、
高校生とともに早朝4時から収穫。
自分たちが取った完熟メロンを各地に発送した。
ひと夏で55名の方に試食・購入していただき、
まことに少ない額だが、農家さんの売上に貢献できた。
今の奥田のモチベーションになっている。

「再エネ農業」で町に残る若者が増えないものか

「再エネ農業」で町に残る若者が増えないものか

新しい試みはようやく始まったところ。
成果というほどのものはまだ出せていないが、迷いはない。

『デンマークでは農業だけでやっていけない農家の人が、
売電収入を得ようとして風力発電の導入が進みました。
それができるのは、強い風のエネルギーがあるところだけ。
そして、風が強い地域は一次産業が基幹産業のところが多いんです。
鰺ヶ沢にはその両方があります。地権者が農家さんの場合、
農業と売電のダブルインカムで安定した収入を得ることが可能です。
「再エネ農業」といいますが、風力発電に加え、
畜産・木質バイオマス等の再生可能エネルギーを
活かした農業ができればと思います。
その仕組みができれば、鰺ヶ沢高校の生徒の中から
農業をやってみようかなという若者が出てくるかもしれません』

目標は、地域の持ち味を活かした開発に取り組むこと。
風車をはじめ、再エネの発電所が建った地域は
若年層の人口比が高くなる、そんな理想像をイメージすることが
今の奥田のモチベーションになっている。

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